前回の記事「べったら市」は東京の風物詩のひとつ。
東京には、年末近くの各地の華やかなイルミネーションなどは別にして、江戸時代から続く風物詩が多い。
それも庶民の住まいであった下町に多くあり、江戸っ子達の祭りだった。それぞれは寺社と結びついたものが殆どだ。
11月に開かれる「酉の市」もその一つ。
2019年の酉の市は、11日(金)、20日(水)である。
昔から三の酉の年は火事が多いと言われてきた。その理由はいろいろに伝わってきているが、何の事はない、数だけなら2年に一度は三の酉になる。
北風と共に火を使う機会が多くなる冬に向けての戒めでもあったようだ。
「おとりさま」とも呼ばれる酉の市開催は、前回記事のえびす講とは逆に関東に多い。
東京で有名な酉の市は、新宿の花園神社、目黒の大鳥神社、そして最も人出の多い浅草の鷲神社がおとりさまのキングだろう。
鷲神社は遊郭吉原がすぐ近くにあり、江戸時代から男たちが遊びに出かけるのに、酉の市は格好の口実だったとか。
江戸時代、事実は物見遊山の女旅も伊勢詣、大山詣となると、お上からも許されていたようだから、寺詣、神社詣はその最終目的が俗っぽいものであっても皆が大目に見ていたかもしれない。
現代では鷲神社の「おとりさま」に来て、吉原のソープにも立ち寄る人は少ないだろうなぁ。
毎日混雑している浅草浅草寺から歩ける距離であるが、鷲神社の普段は訪問者は多くない。
鳥居脇の大きな熊手も派手なだけに、遊女がお茶を挽いてるようにも見える。
ところが酉の市、それも夜となると様相は一変する。
実は前回記事のべったら市も陽が沈んでからも賑いは続き、昼間とは趣が一変する。
▼2016年の二の酉の様子。
浅草国際通りを鷲神社方面に向かうと、徐々に露店が多くなる。
ただし、べったら市と違って、アルコール類を出す店がやたら多い。
そこでチョット引っ掛けて、勢いをつけて神社に向かおうとするのかしら? だとしたら何に勢いをつける?
吉原に繰り出すというのなら、理解できないことでもないが行先は神社だ。
神社でお参りをして、熊手を買ってからの帰りの一杯とも見られない。
などと思いながら歩みを進めようとしても混雑でなかなか進まない。
歩道でも動きのある車道寄りを進んで、やっと鳥居前にたどり着いても、そこからは右折させてくれない。
黄色い規制線が引かれている。
鳥居をくぐって境内に入るには、そのずっと手前から、通行する人と境内に入る人に分かれていて、全く動きのみられない列に並ばなければいけない。
なんとか鳥居をくぐり、人に押されて流されるように拝殿前に近づくが、殆ど自由が効かない混雑ぶり。
それにしても数知れない奉納提灯が灯された光景は圧巻で、幻想的でもある。
祭の夜の神社、除夜の鐘の後の神社は独特の雰囲気がある。
拝殿前を横に回る。
熊手を売る店が何十軒も連なる。ここもまだ大混雑だ。
ライトに照らされた熊手。これも心をワクワクさせられるような雰囲気。
本殿周りを彷徨っていれば、やっとホッとできる少し空いた場所も見つけられはず。
ただし、社務所では数人の方が対応されているものの待ち時間は20分、30分は覚悟が必要。時間帯によってはもっと長くなるかも。
夜の「おとりさま」をまだ参拝したことのない方、まだ御朱印を頂いてない方は混雑を覚悟で、ぜひ訪れてみてください。仕事帰りに寄っても十分間に合う。
チョット感激の景観と御朱印がいただけること間違いないよ。
そう来月、11月は訪問のチャンスが3回ある。18日土曜の二の酉は夕方からがチョー狙い目だよ!
人混みが苦手な人は昼間だね。
商売人でなくても、ほんの小さな熊手を一つ買って帰れば、新しい年は福をいっぱい搔き込めるかも。
▲遠慮がちな「二之酉」の印が押されていた。
▲鷲神社(東京都台東区千束)