▼世田谷山 観音寺 2020年の御朱印です。(天台宗・東京都世田谷区下馬四丁目)
▼同、 観音寺 2012年の御朱印。
しかし、8年の時間は
御朱印中央の墨書きを「聖観世音」から「大悲殿」に変化させていました。
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▼東京でも世田谷区や大田区は広い面積を持っています。
正式名称の「観音寺」は全国には売りに出るほど、
いや東京でも叩き売り状態に近い供給量の多い名称です。
▼だから通称「世田谷観音」で通って、親しまれています。
寺は広い境内を有しています。
千代田、中央、港区にこの広さの寺を維持しようとすると、相当な勇気が必要かもしれません。
世田谷区というと何となくハイクラスなイメージですが、
その発展が23区の千代田区から始まり
「の」の字を書くように右回りの渦巻き状態で展開されていったことだけを考えると、所詮外郭にある世田谷区で、足立、葛飾、江戸川区と大きな変わりはないでしょう。
この観音寺に負けない広さを持つ西新井大師や柴又帝釈天があります。
▼正門の寺標は吉田茂の揮毫によるものです。
あの麻生太郎のお祖父さんです。
双方とも総理大臣経験者ですが、人物評は大きな隔たりがあるようです。
▼門柱の上には恵比寿と大黒天像。
寺の入り口で、それも門柱の上で七福神が参拝者を迎える姿は珍しいでしょう。
何やら門前から賑やかな寺です。
寺には七福神像が全部で11体あるとか。
▼石碑には「特攻平和観音」と刻まれています。
▼正門から入るとすぐ左に「本坊」。
▼「旧小田原代官屋敷」とありますが、小田原から移築したものなのでしょうか?
▼屋敷の中庭は苔と梅の木で趣のある眺めです。
▼屋敷門の隣に「あゝ特攻」の像と地蔵菩薩像が並び、2体が並ぶとどこか妙な感じです。
特攻隊の像や石碑、供養塔は護国神社を思い出させられますが、
ここは神社でなく寺院。
と改めて言い聞かせてみたものの
▼「さざれ石」の登場です。
少しだけ苔の「むす」さざれ石ですが、寺にさざれ石とは不思議が「むす」始めました。
▼まだ山門も潜る前というのに色々な摩訶不思議さがワクワクです。
▼寺の山門前の狛獅子には慣れっこです。寺にも狛犬です。
▼「清国(現在の中国)の第四代康熙皇帝 辛未年(1691)に進献されたもの」と説明されています。
それがどうしてこの寺にあるのでしょう?
▼仁王門の鬼瓦と一体となって頭に鳥が載っています。何を意味するのか?
▼仁王像は平安時代の作だそうです。
▼仁王門に吊られた大提灯の底には鮮やかな龍が彫られています。
▼国の重文である不動明王像が祀られている不動堂(六角堂)は京都の六角堂を模して造られたものとか。いい姿をしています。
寺のHPによると不動堂は仁王門と同様、中野家から移築したもだそうですが、中野家が何者であるかの説明はありません。
調べました。
中野家とは「日本の石油王 中野貫一」という人物でした。
新潟にあった新津油田は1910年には日本一の産油量を誇っていたそうで、現在は「石油の里」「中野邸美術館」として知られているそうです。
この寺はその中野家の財力も関係しているようです。
▼「夢違い観音」は奈良法隆寺で有名です。レプリカですが本物より数倍大きい。
▼本堂の「観音堂」も中野家から移築されたものです。
中野家が石油王だったことは分かりました。
その中野邸内に仁王門や六角堂、観音堂があって、この寺に移築されたと言うことですが、
中野家はまさに寺院のような邸宅だったのでしょうか?
いずれにしてもここ観音寺は、
中野家とは別の事業家、のちに大僧正睦賢和尚と名乗る人物が
私財を投じて1950年に創建されたそうです。
ダンダン、分かってきました。
この寺は睦賢和尚や中野家の「夢の城」だったのでしょう。
仏と神と建物の「テーマパーク」にしたかったのでしょう。
創建は昭和なのに古刹さが漂う「ワンダーランド」なのです。
悪く言えば「寄せ集め」。
でも大僧正睦賢和尚は真剣だったようです。
もしかしたら当時は奇人と見られていたかもしれません。
もし奇人としても彼のおかげで、新しくも古い観音寺を興味深く、不思議な思いを残すような訪問ができるのです。
▼本堂の隣に「特攻観音堂」。
観音様が「特攻」したわけではありません。
特攻隊員たちが自らの命を犠牲にした、そんな世の中を二度と繰り返しててはならない記憶として、
平和を願う「特攻平和観音」は、その時代の大僧正睦賢和尚の願いと祈りが理解できます。
とすると、もうこの寺に何が存在しても不思議に思いません。
▼何でもありのテーマパークですので「三鈷の松」もあります。
弘法大師も OKのサインを出していることでしょう。
▲▼手水舎も鐘楼堂も有名処から引っ越しされてきたもののようです。
梵鐘は慶長年間の記しがあるそうです。
▲開山塔に ▼多宝塔。これらも歴史と所縁があって当然のようです。
▼釣った魚を抱えているのは恵比寿。TVに出てくる蛭子さんも同じエベッサン!かも。
▼ここのエベッサンは、釣った鯛の白身より「ヒカリモノ」のほうが嬉しそうです。
▼鳥居はあるのですが、どれが社殿か定められませんでした。
▼この寺、究極のワンダー!
さすがテーマパーク。
寺社に、神仏に、何の知識はなくても、訪問したら誰しも興味深い寺になるはずです。
少し寺の知識を得たら半日、いや一日いても飽きない寺でしょう。
この寺に門前の商店街が無いことが残念です。
少し距離はありますが「三軒茶屋駅」や「学芸大学駅」から参道を作れれば、
柴又帝釈天の賑やかな参道、
深川不動のご利益通り、
巣鴨の地蔵通り
に匹敵することは間違いないでしょう。
なにしろ東京で、これほどのテーマを意識した寺は他に知りません。
江戸三十三観音霊場巡りで御朱印を求めて、32番のこの寺を訪問した人たちは、じっくり境内を見て回っている余裕はないのです、きっと!
ぜひ、あらためてこの寺を訪れて、チーン!ミラクルワンダーランドを
お確かめください。