荷風が好きだ。今時、そんな奴は少数派かもしれない。彼は向島に入り浸っていた時期もあり、ちょっとスケベな独身変人オジサンのイメージだ。
されど彼の残した「断腸亭日乗」。面白いのだ。青空文庫で無料で読める。
以前も文字を叩いた。彼は雑誌「散歩の達人」の先駆者だ、散歩描写の達人だ、文学にしたのだ。彼の生きた時代の各地を探ってみたい。
しかし今夜は、そこに深く触れない。次の機会にする。
葛飾八幡宮を訪れたのは春先。
同じ年の10月、この時も荷風の足跡を追ってふたたび市川へ。
広くも無い道路、白旗天神社を探しながら車を流す。カーナビが頼りないのか行き着けない、なかなか見つからない。夕方に近かった時刻、車のウインド〜から身を乗り出すように周囲を見渡す、神社の入り口の案内はないか?と。
案内はあった。物陰から突然現れた2人が「いらっしゃーい!」と手招きしてくれた。
車のブレーキを踏んだ。おまわりさんだった。がっかりした。当たり前に天神社の案内ではなかった。
首を伸ばして辺りを窺うあまり、邪魔になってたシートベルトを外してた。
安全運転義務違反のご案内だった。
あなた達、物陰から突然現れて、いったい、どこでわしを見てたのよ?
少し手前に別のお仲間がいらしたようだ。
白旗天神社を見つける前に、わしが白旗を上げることとなった。
罰金は無い。違反点数の持ち点は、マケてくれなかったが、彼は「白幡天神社?どこにあるか知らない」と言うオマケは与えてくれた。
過去におまわりさん達が、個人的にわしの役に立ってくれた記憶は一切ない。
他人に迷惑をかけた覚えなく、自己責任で個人的に行動するわしの道の前を阻むこと数回。「イイカゲンニしてよ!」怒鳴りたくなる。
違反者を取っ捕まえるより先に、安全運転を促す方を優先すべきよ!!!
わかっているわ、わしの自己責任より法律優先だ。彼らの仕事だ。
「物陰から突然現れないで!事前に道路の片隅でも堂々と目立っていてくれさえすれば、わしだってシートベルトを掛け直すわよ!」「何を優先すべきか、考えて!」
棚の上に置かれた、わしの分身が悲痛な声で叫んでた。