蔵前神社の御朱印
「くらまえ じんじゃ」主祭神:誉田別天皇(東京都台東区蔵前3-14-11 )
「蔵」の文字は旧字の「藏」が使用されています。
御朱印二体は神社名の筆書きのイメージが異なりますが、
おそらく書き手さんは同一人物でしょう。
しかしスタイリッシュになった筆文字は、この街、蔵前を象徴するようです。
2020年の御朱印には「江戸の北斗七星」のスタンプが押されています。
江戸時代には北極星を信仰対象ともされていて、
都市計画では「北斗七星状」に並ぶように、七つの寺社が建立されています。
蔵前神社がその七社うちの一社に当たるのでは?という説があるそうです。
▼蔵前神社の御朱印(2020年)。
▼蔵前神社の御朱印(2012年)。
▼蔵前神社へは浅草線の「蔵前駅」と大江戸線の「蔵前駅」の中間に鎮座します。
▼江戸時代末期の切絵図「東都浅草絵図」では下方中央に神社が描かれています。
▼文字が読めるように逆さにして見ると、
大護院「八幡宮」成田不動と書かれています。
絵図の紺色部分は隅田川、その下の広い通りが現在の江戸通りです。
1693年、五代将軍綱吉が石清水八幡から勧請した創建当時は広大な社地を有していたそうですが、この絵図の頃にはもう縮小されていたことが見て取れます。
「大護院」は別当寺、「成田不動」は門前仲町へ移転するまでここにあったそうです。
当初は「石清水八幡宮」とされていましたが、一般には「東石清水宮」「蔵前八幡」などと呼ばれていたそうです。
明治以降も「石清水八幡宮」「石清水神社」などと改称を繰り返しましたが、
「蔵前神社」と改称されたのは戦後の1951年。
▼言うまでもなく「蔵前」の名称は切絵図に「浅草御蔵」とあるように、隅田川沿いに数十棟の米蔵があったことに由来します。
その後は、特徴のない商業地と住宅地が混在するジミな街でした。
地下鉄大江戸線が開業したのは1991年。便利に「蔵前駅」が二つになりました。
それでもジミな街でした。
▼そしてつい最近では「東京のブルックリン」とも呼ばれるように変貌しています。
その呼び名にはちょっとムリがあるように思いますが、
カフェや雑貨店など、倉庫や古い家屋を改修して、おしゃれな店舗が点在がすることからブルックリンの雰囲気に似ているそうです。
▼確かに蔵前神社の周辺には cafe が10数店舗あります。
もともとはジミながら、ものづくりの街であり問屋街でもありました。
そこにカフェ、バー、スタイリッシュなインバウンドホステルなど、
オシャレなお店が続々と増えはじめ、若者たちが集まる注目度の高い街へと大きく変貌しようとしています。
神社とは直接関係ないものの、神社周辺にこんなショップや cafe ができることは神社にとっても悪くないことなのでしょう。
何しろついこの間まで「何もない街」だったのですから・・。
神社から半径100m以内の様子にちょっとおつきあいください。
▼もちろん街が忘れられていた時代の建物も残っています。
でもこんな建物が生きていられるのも時間の問題でしょう。
蔵前の街事情の前置き記事が長くなりました。
▼2012年訪問時の神社の様子です。
境内は半ば駐車場のように使われていました。
▼2020年には、そんなヤボな車の姿は見えません。
▼「勧進大相撲発祥の神社」とも言われていますので、神社の玉垣には往年の横綱の名前がいくつも見られます。
玉垣の他にも相撲協会からの寄進だと思われるものもあり、協会との繋がりの深い神社だと理解できます。
▼また「古典落語ゆかりの神社」でもあります。
▼現役の落語家の名前も彫られています。
▼幹線道路の「江戸通り」から一歩西に入った路地に立つ鳥居はまだ新しそうです。
▼春もすすんで、ピンクの花が残る葉桜とのグラデーションが美しく見えます。
▼狛犬たちは勇猛果敢なツラ構えですが、鼻の穴は大きく開いています。
▼美しい社殿は同じく戦後間もない再建。
▼「古典落語ゆかりの神社」とするのは、落語の演目「元犬」の舞台となっているからだそうですが、その舞台は目黒不動とする噺家もいるそうです。
白犬は人間に近く、信心すれば来世には人間に生まれ変われる。
噺によっては「蔵前の八幡」になったり「目黒不動」だったりするわけですが、
人間になった犬が巻き起こす珍騒動を聞かせます。
女中のお元さんに用事ができ、片岡さんが「お元はいぬか?」と声をあげると四郎が勘違いして
「元は犬でございましたが、今朝がた人間になりました」
数多く開催された勧進相撲の他にも
▼江戸時代には素人の力持ちたちが境内で力自慢を競い合ったそうです。
歌川国安の描いた酒樽を持ち上げる錦絵は、そのまま酒のポスターにも使われたとか。
▼境内の南側にも神社入口があり、こちらには朱の鳥居が建ちます。
猫が散歩から帰ってきたようです▲
▼南の鳥居から境内に足を踏み入れると、左手に境内社の「福徳稲荷神社」。
▼そして先ほどの鳥居下の猫が社務所の玄関入口で、中に入れてもらいたくて誰かが扉を開けてくれるのを待ってます。
開けて入らせて良いものか否か分かりませんでしたが、
開けてやったら、いつもの自分の居場所らしくシューズボックスの上にヒョイと乗って落ち着きました。
▼開けてあげたのに、あまり感謝されているとは思えない目付き。
▼他にも境内をよく見るとネコが数匹見つかります。
おそらく猫好きな宮司さん一家。
安心できる住処で、幸せそうな猫たちの顔はおだやかです。