伊勢参りの犬は有名です。
お伊勢参り、お蔭参り、抜け参り、みな同じだが微妙に異なる表現がたくさんあります。それだけ伊勢詣は大きな話題と、庶民のあこがれだったわけです。
代参でワンコが往復何千キロも歩いて、お札をいただいて帰ってきます。
現実にあったとしても、まだ日本がおおらかで、のどかな時代だった時のメルヘン。
「初めてのお使い」どころではないのです。
動物の帰巣本能はあると仮定しても、行った事のない、見当もつかない伊勢を目指さなければならない。
首に伊勢詣の木札をぶら下げているとしても、ワンコにしてみたら何とも心細い旅だったはず。
アリガタイ事なのか、メイワクな事なのか、ワンコにもよく分からない。引き返したい気持ちを押し殺して主人のために出発します。
しかし、現在も四国に残っているお遍路さんに対する「お接待」のように、一目で伊勢参りの代参である姿をしていれば、ワンコは次々と施しを受けたり、人と同道したりして、伊勢にたどり着いた事でしょう。
犬の代参は伊勢詣だけかと思ったら、金比羅詣もしていたようです。
江戸時代「こんぴら狗」と呼ばれていたとか。
伊勢も金比羅も当初、犬は穢れとされており境内には入れなかったはずですが、代参と理解されるや、犬は境内に入る事を許されたそうです。
江戸時代には、そんなハートウォームな出来事が話題となり、多数の目撃談が出たり、浮世絵などにも描かれています。
明治に入ってからは、この話はプツンと消えて無くなります。
飼い犬のシェアを洋犬が拡大し始めたせいか、日本人の犬の飼い方が変化したのか、はたまた整備された交通のせいか、定かでありません。
東京区内に飼われている我が家のワンコなど、伊勢、四国は外国です。
帰巣本能も、集合住宅の10階ともなると、帰ってくる事さえ怪しくなる情けなさ。
何かのアクシデントで、我が家とは途方もない距離のある場所に置かれた犬が、何日も何週間もかけて、飼い主の家に戻ったという話は度々ニュースなどになります。
珍しい事だからこそニュースになります。現在の室内犬は、ちょっと目を離すと、即迷子犬となってしまうのも、やむをえない事かもしれません。
我が家のワンコの首には伊勢詣の木札ではなく、名前・住所・電話番号が記された札がぶら下がっています。
たまに人間にも同じような内容が記された札を、ぶら下げている人を目にします。
超高齢化社会ですので・・・。
現代は我が家に帰ることさえ怪しい犬や人間が増え始めた、そんな時代?なのかしら?!
----------------------------------------------------------------------------------------------------
▼四国は香川県の本家です。