「廻れば大門の見返り柳 いと長けれど・・」
1895年(明治28年)に発表されたこの小説中の主人公、美登利、信如そして正太、長吉、三五郎の少年少女たちが活き活きと暮らしていた竜泉・千束の町を歩いてみます。
ちょっとガラにもないかな。
▼吉原大門への入り口。
遊客が名残惜しんで見返ったという柳は、何代目か分からないが残されているます。
春先の柳はまだ葉が少なく、電線なのか柳葉なのか分からず寂しいのですが、夏に向かって葉はモサモサになるでしょう。
吉原大門への導入路は奥が見渡せないようにワザと「く」の字に曲げています。
衣紋坂と呼ばれていました。昔はもっと勾配があったかも。
大門跡。245×330mの遊郭があった当時は一般人の唯一の出入口。
その周囲は「お歯ぐろ溝に燈火うつる・・」と幅3〜4mほどのドブに囲まれていました。
この先の左右に延びる道は「江戸町通り」「揚屋通り」「京町通り」として江戸時代のままの名を残し、ソープが連なっています。
昼間から呼び込みの男性の姿がチラホラ、カメラを向けることも気後れすします。
気が弱いからヤメトクことにします。
「揚屋通り」を吉原から出るように北に進みましょう。
「大音寺前と名は仏くさけれど・・・」の地域に出ます。
「明けくれなしの車の往来に・・・」
明治の「車」、人力車がひっきりなしに通っていました。
当然舗装もされてない道幅4mにも満たなかった大音寺通り(茶屋町通り)の今は車の往き来も少なくノドカだです。
一葉が「荒物屋」を開いていた旧居跡。
道路の向かいに、たけくらべのモデルとなった少年少女たちの溜まり場「筆屋」(文房具店)があったそうです。
120年以上も前になる明治26年の名残は一切ありません。
ここに一葉が住んだのは10ヶ月ほどだったそうですが、一葉が商った「駄菓子雑貨屋」や、作中の「筆屋」の軒先がこんなんだったら、と希望的シャッターを切ったものの、商売もままならない貧困生活の中に植木や花を育てる余裕はないわね。
一葉旧居跡のすぐ近くにある「一葉記念館」。入館料300円。入ってません!
資料館のようなところは時間をかけてジックリ見て回らないと意味がないのですが、有料のところは大概1時間くらいは必要になります。
御朱印目当ての地方などでは、そんな時間がもったいなくなる時もあります。いつもイタシカユシです。
台東区で近いのだから今度ユックリ、覚悟して入館してみましょう。
▼建物の前は「一葉記念公園」。菊池寛による撰文の記念碑。
「八月二十日は千束神社のまつりとて・・」
夏祭りで張り合っていたグループの喧嘩が始まったくらいだから、普段からこの境内で美登利と信如たちは遊んでいた?! たぶん!
一葉を追っているのか、美登利を探しているのか分からなくなってきました。
レベルの低い脳内では、年齢の違う二人を交錯してしまいます。
境内にある涼しげな顔の彼女に笑われるわ。
「多くの中に龍華寺の信如とて・・」
▼龍華寺のモデルは大音寺。
由緒ある寺だそうだが、今は少し荒れ気味の境内に寂しげな本堂。
閉じてる門扉を勝手に開けて境内に入ってみるものの、本堂右手の庫裏らしき建物も「ダメだ」とても御朱印の有無を聞いてみるような雰囲気ではありません。
さっさと出ます。
「知らずや、霜月酉の日、例の神社に欲深様の
かつぎ給う、これぞ熊手の下ごしらえ」
酉の市で有名な鷲神社のことですが、一葉は酉の市で熊手を手にする商人を「欲深様」と表現しているのはおもしろい。一応士族の出であった彼女は「欲深様」の商人を蔑視していたかもしれません。
彼女から見れば「縁結び」や「金運」など自分のことばかり願って神社に詣でる人はすべて「欲深様」なのかもしれない。同感!
それにしては食うためといえ、この地で雑貨、駄菓子を商っているから矛盾しています。
と言っても店番は妹や母親に任せ、本人は店の奥で小説に取り組んでいたそうです。
「たけくらべ」作中にこの神社の名称は出てこないと記憶しますが、一葉がこの地に転居してきた明治26年には既に遊郭内のいくつかの稲荷神社が合祀されて吉原神社となっているから、見聞きはしているはずです。
▼同じく2014年の御朱印。
悲運の吉原遊女たちを供養する弁財天も、江戸時代、吉原遊郭が人形町から移転して造成された当時からこの地にあったそうです。
一葉旧居跡から根岸方面にまっすぐ、国道4号日光街道を横断して少し歩きます。
「三嶋神社(みしまさま)の角を曲がりてより、
これぞと見ゆる大廈(いえ)もなく・・」
下谷のこの神社から竜泉方面を見ての説明でしょう。
一葉の明治26年はこのあたりは田畑が広がっていたのでしょうか。
御朱印を初めて手にしてから7年になるというのに、この神社の存在を知りませんでした。
昔「たけくらべ」を読み始めたものの、自分にはあまりの読みづらさに途中で挫折。
ところが御朱印を求めて神社巡りをしていると、前回記事のように、人が多く集まるせいか所々の神社近辺の遊郭跡に遭遇します。
そして、吉原、竜泉と紐解いていくと一葉の「たけくらべ」にぶつかる。
一度、途中で投げ出した一葉を改めて読み直してみます。なんとか読み通せました。
すると、すでに御朱印をいただいた寺社名がドンドン出てきます。
で小説内容を記憶に、今回改めてこの地を歩いてみたのです。
読み直した「たけくらべ」以前は、この「三嶋神社」は見聞きしていませんでした。
これは訪問しなければいけません。
というわけで、この神社にもやってきました。
仕事がヒマだからトコトコ日比谷線に乗って平日の19日昼に訪問。
▼社務所の受付はベタベタと雑然としています。
▼しかし、この案内を見ると作った方の人柄が見えてくる。
親切丁寧だが細かいことにはこだわらない。ザックバラン! ?
性格予想はピッタリ、宮司さんは素敵なおネェさんでした。
見開きで2つの御朱印をいただいて少しお話します。
「300円、600円くらいでイチイチ御朱印に対応、やってられないわねぇ?」と問いかけ。
宮司「そうねぇ〜!? でも、それも・・・」と話されるうちにプリントされた案内をドンドン渡されました。
飴もどうぞと勧められる。一ついただきました。話好きそうです。
あろうことか名刺までいただきました。
裏面は英文になっていてケータイ番号まで印刷されています。
宮司さんから名刺をいただいたのは初体験。まだまだ初体験は出てくるものなのね。
プリントされた案内は日・英・中の3ヶ国語。HPも3ヶ国語。
そしてこんなものを見せてくれ、実演して見せてくれました。
60ヶ国語をシャベッてくれる「ポケットトーク」。
30,000円ほどしたそうです。
さらにネットに繋がっているから月々の料金も派生しそう。
スマホの翻訳アプリの方が安上がりになりそうだが、それは指摘しなかった。ブスイになります。
浅草・上野が近いだけにインバウンドのオコボレ的状況に「オモテナシ」の気持ちとともに、東京でも格差がますます広がる神社のなかで、小さい神社がいかに生き残れるかに必死の様子をステキな女性宮司、河野さんは熱く語ってくれました。
ガンバレ!三嶋神社
ガンバレ!河野宮司!! 違った! これは一葉でした。
ちなみに三嶋神社の雷に由来する伝説から「落ちない」ということで
不落祈願(開運祈願)は個人の場合、樋口一葉1枚だそうです。
そろそろ、一葉の記事ともお別れ。
一葉のわずか10ヶ月の竜泉の生活の中、人や街を観察する眼はなんと鋭く、その吸収力も驚くばかり。
商売はうまくいかず廃業して、竜泉を後に再び本郷へ転居していきました。
そしてそこから「大つごもり」や「たけくらべ」「にごりえ」など、次々と作品を発表した「奇跡の14ヶ月」と言われる一葉の快挙が始まります。
美登利はと言えば姉と同じ「遊女」の道を歩み始めます。
竜泉と違って、本郷には一葉が使ったと言われる井戸や質屋など、彼女の痕跡が色濃く残っています。
小説は別にして一葉の困窮生活だけは我が事のようにシッカリ理解できるのが悲しいわね。
長くなるからこの本郷編はまたの機会にしましょう。
さて、このブログには御朱印は数種類しか掲載してませんが、
タイトルの「16の御朱印を得る」オススメの歩き方。
スタートは日比谷線「三ノ輪駅」
ゴールは同じく「入谷駅」もしくはJR「鶯谷駅」
もちろん逆でも可。ブログ掲載順序とは少し異なります。
三ノ輪駅近く。ここは吉原遊女所縁の寺。御朱印をいただけます。
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一葉とは関係なし。ここは運が悪いといただけない可能性あり。
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千束稲荷神社 台東区竜泉2-19-3
一葉の像がある。御朱印がいただける。
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正寶院(飛不動)台東区竜泉3-11-11
一葉の旧居跡、記念館のすぐソバ。関東36不動24番の御朱印がいただける。
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長国寺 台東区千束3-19-6
鷲神社に隣接。書置きになるかもしれないがご首題がいただける。
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鷲神社(おおとり神社)台東区千束3-18-7
神社印と浅草名処七福神の「寿老人」の2種類がいただける。
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吉原神社 台東区千束3-20-2
ここも神社印と七福神の「弁財天」の2種類がいただける。
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このブログ掲載のように、境内社の火除稲荷社の御朱印もいただける。
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ここからは一葉、たけくらべとは関連なし。
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鬼子母尊神と下谷七福神の「福禄寿」の2種類。
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ここも神社印と下谷七福神の「寿老神」の2種類がいただける。
で、しめて16の御朱印を得られますが、言うまでもなく自分のこれまでの経験であって保証するものではないわね。
歩く距離は5km前後ではないだろうか。時間も5時間あれば十分と思う半日コースだ。
季節も良いので誰でも歩ける道のりだ。浅草や上野の喧騒からかけ離れて、この界隈はサイコーにノ〜〜〜ンビリ廻れる。
皆さんの幸運を祈ります。