食べ物を「オイシー」とか「ウマイ」「マズイ」という表現は極めてアイマイなもの。味覚・嗅覚などの五官のほか環境や状況など、さまざまな要素で変化する。
食レポでよく使われる「アマイ」「ヤワラカイ」「スッパイ」という味覚表現は、糖度、酸度などで数値化でき、ある程度の目安にはなるかもしれない。
1日か2日間、食べ物がない状況にあり、その後、塩ムスビが与えられたとしたら、これまでで一番美味しかった食べ物は「塩ムスビ」ということになる。しばらくは・・・。
SNSで食べ物を紹介し、やれ「オイシー!」とか「うまい!」とかなどは夢、幻、全くのタワゴトなのだ。
しかし、人々は「タワゴト」が大好きなのだ。バカバカしいから面白いのだ。
で、この場でも、たまには「戯事」を記事にしてみる。長野旅で食べた蕎麦の話。
話はそれるけど、蕎麦はどうして、いつからこんなに高い食べ物になってしまったのだろう?
関東で言えば「小諸そば」とか「ゆで太郎」という立ち食いそばでしか安く食べられない。もちろん「オイシー」なんて言葉が口から出るシロモノではない。
座って食べられる一般の蕎麦屋に入ると、もり蕎麦でも600円、700円は当たり前になっている。それも1枚ではとても腹を満たす事はできない量。
この少ない1枚の量は、
蕎麦屋に入って板わさか、卵焼きをアテに日本酒を1本か2本、そしてシメに「もり」か「ざる」という、そんな粋なシチュエーションを基準にしているのか?
700円、800円のラーメンと比べると、何ともやりきれない、食ってられない!
もはや「おいしい」蕎麦は庶民の食べ物と言う範疇からドンドンかけ離れて4km先にある。
さて1件目の戯事です。
▼「道の駅 小坂田公園」です。諏訪から松本に向かうR20号線沿いにあります。
▼当然、土産物なども売っておりレストランもあります。「手打ちそば」の文字が見えます。特に「手打ち」じゃなくても構わないのに、いつ頃からか「手打ち」「手作り」が「美味しい」の代名詞になって久しく「手打ち」「手作り」の大安売り。全く信用しない。
へそ曲がり的には、わたしの好みに合えば「機械打ち」だろうが「めくら打ち」だろうが一向に構わない。
で、ここのレストラン「茜里」に入ってみる。
中途半端な時間だったせいか、客は他に1人もいません。
「失敗したかな?」ちょっと「ヤバイ」感が胸に広がります。
▼店のHPの写真です。
▼同じ「ざるそば」を注文しました。850円。
麺の量がいくらか少なく感じるけど、HPの写真とほぼ同じでした。
基本的に「そば」「うどん」は暖かいものは注文しない。暖かい「つゆ」だと味が誤魔化されやすく、麺の味もよくわからない。
食べかけの写真は撮影失敗!
写真では、よくわかりませんが「ざる」にしては海苔が少ない。そして「つゆ」は透き通って半透明。
空いている店内と、「透けてる つゆ」に大きな期待はしません。
最初の一箸をススリました。
アテにならないタワゴトだけど、なんてこった「美味しい」のです!
あらゆる想像を完全に裏切られました。
一つだけ不満があるとしたら、麺の量を115%にして!
あとは不満なし! 94.8点でした。ごちそうさまでした。
3日間でNo.1の「おいしさ」でした。
教訓「人は見かけによらない」しかし「人は第一印象がすべて」。
どっちだかわからないが、蕎麦も店舗も同じで、やはりわからない。
▼2日目の「蕎麦」はここでいただきます。またしても望んでない「手打ち」です。
▼雰囲気のあるお店です。寝覚の床の近くにあり「見かけ」は合格です。
▼店内の他の客は1人。そして微妙なメニューは、安っぽい中華屋のような体裁。
しかし数字は高級だ。「2枚1組で1人前」とある1,240円。
「もりそば」では初体験の、えっっっ? 宇宙的な、天文学的な「もりそば」価格だ。まぁ、2枚だから許す!
▼一杯やっているわけでなく、徳利は「つゆ入れ」です。
▼やってきました「盛りそば」1,240円。いただきますが・・・。
▼1枚食べ終わって「なんだよぉー、おまえ、まだ1枚残っているのか」と言いたくなる。
うどんだか、蕎麦だかわからないような食感に、つゆも記憶に残らない味、香り。
▼投げようかと思ったけど、ムリ無理、平らげました。ヤケクソです。
普通、空腹だと「おいしさ」は増します。空腹は何よりの「ご馳走」のはず!
でも、この蕎麦はわたしにとって初体験の教訓でした「空腹でも美味しくないものは美味しくない!」
美味しさは、あらゆる条件に左右されるけど「味がない」は、まだ救われる。「マズイ」は、人がどんなムゴイ環境に置かれても「マズイ」のだ。悲惨な味覚はさらに心まで寂しくする。
創業三百余年、ずっとこの味を守ってきたのかしら?
こう言う蕎麦を提供する店もあるのか!
感心して、ガッカリして「寿命そば」に縮む思いで店を出ます。
まぁ、無責任なタワゴトです。
後日調べたら、あの秋篠宮様がこの店で3枚食べられたそうで、日本で2番目に古い蕎麦屋、藤村の「夜明け前」にも描写があるとか。
蕎麦もつゆもデリケートなもの。わたしが訪れた時は偶然、すべてが調子悪かったかもしれない。どんな店も2度訪れてみないと、その評価は決められない。
▼3日目の「蕎麦」はここでいただきます。光前寺の門前にありました。
▼店内は多くの人で賑わっています。
▼「手打ち」の文字はありありませんが、看板には遠慮がちにありました。
▼ここでも「ざるそば」を注文します、800円。
合格でした! 蕎麦の量もたっぷりあり、麺の食感もつゆも及第。
一緒に出された写真右下のお新香もサイコーでした。正体不明、甘酸っぱかった。
すべて、とっても美味しく満足させられました。
支払いカウンターに土産用の蕎麦が何種類か置いてありました。
その一つを指差し「この蕎麦、おいしい?」と愚問。
カウンターの向こうのおネェさん
「おいしいですよ! 1回しか食べた事ないですけど・・ 」
自分では1回も食べた事ないのに「おいしいですよ!」とすすめる人もいる。
このオネェさんは「1回しか食べた事ないですけど・・」と正直そうだから、一つ買って帰る。
あとはひたすら東京への道を走ります。
茅野まで中央高速は使わず R152号「杖突街道」を行きます。
▼「杖突峠」の展望台では絶景が待ってました。
最近 TV などでは「絶景」と言う言葉で溢れています。
節操なく、何でも「イケメン」「ゼッケイ」と大安売りだから、使いたくない言葉だけど、諏訪と茅野の街が箱庭のように見えるこの景色は思わず「ゼッケー!」と口から漏れる。
茅野から高速に乗ろうかと思ったものの、国道20号の流れが良いので、とりあえずそのまま下道を行きます。
しかし8月13日の東京への上り路線は大月あたりから、高速もR20も渋滞の情報。
Googleのおすすめで R413「道志みち」に入り、相模原からR246へというルートを取ることにします。
「道志みち」はエンドレスで、これでもかとクネクネ道が続きます。
交通量もそこそこで、前に3台ほど、後ろにやはり3台ほどで連なって走りますが、陽もすっかり暮れて暗いクネクネ道はそんなにスピードが出ない。
それでも40〜50km/hだったろうか。
右ライトがいきなり鹿らしき動物の頭と背中の一部を照らした。
ドンッ! 少し衝撃! やってもうた!
鹿は倒れた感じはなく、すぐ右後方に視界から消えた。
すぐ後ろについていた車はやはり減速、ミラーで鹿は確認できない。
これは確実に車は凹んでライトカバーも割れているだろう。
片道1車線だから止まらず、そのまま500mほど走ってスペースを見つけて車を降り確認してみた。
街路灯もない暗い道路だから詳細は別だが、車はどこも凹んでなかった。ライトも割れてない。
予測の速度より低かったのだろうか?
しかし、フェンダー部分に唾液のようなアトが・・・。
少し指にとって匂いを嗅ぐ・・・ケモノ臭だ。
鹿は体の他に顎あたりをぶつけたのだろうか?
可哀想なことをしてしまった、大丈夫だろうか?
即、命に別状はないだろうが、どのくらい負傷させてしまったか見当もつかない。
状況を省みる。
夜のくねくね道、道路の右側は山の斜面。
前の車のテールランプだけを意識してハンドル操作に集中する。
ヘッドライトは7〜8m先を走る前の車を照らすばかり。
鹿クンはきっと山側から反対車線に入り、こちらの車線に駆けてきたのだ。
その様子は全く視界に入らなかった。
とにかくいきなり右ライト前に鹿が浮かび上がった感じだ。
▼こんな感じ(YouTubeから拝借)
車列は最低6台で走っていた。よりによってその車列の真ん中あたりのワタシの車に突っ込んできたのだ。
腰の曲がったおばぁさんだったら・・、とゾッとする。
ワタシの不注意とも言えるのだろう。
これまでの運転経験で虫類は別にして、小動物と接触したことはない。
それが初めての接触で、衝突と言えるかもだが、鹿だった。
やはり後日調べてみると「道志みち」は鹿との事故が多いようだ。オートバイとの衝突では大事故につながっている。車で正面ならば双方ともに大きな傷を負うか、鹿は死亡してしまうケースになっていた。
負傷させてしまったであろう鹿の傷が癒えることを祈るシカない。